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幅 : 12.2cm×11.4cm 高さ : 7cm
本作は、雨上がりの大気を映したかのような澄明な青釉をまとった酒器です。盃を思わせる柔らかな椀形の胴に、ごく小さな注ぎ口(片口)を添えただけの簡潔な造形は、用の美と端正さを兼ね備えております。器肌は鏡面のように滑らかで、釉の奥からほんのりと乳濁層が透け、淡いグラデーションが生じています。口縁には釉を薄掛けにして鉄分を酸化させた銀鼠色(ぎんねずみいろ)の「鉄縁」がめぐり、青の世界を引き締めると同時に侘びの趣を漂わせています。
多賀井正夫様は鉄粉を制御し、高温還元で焼成した後、終盤で軽く酸化寄りに切り替える「還元落とし」を採用しておられます。これにより赤味を排した純粋な“雨過天青”の発色が得られ、青の奥に乳濁層が生じることで奥行きが生まれます。
酒器としての使用を考慮し、胎土と釉層の膨張係数をできる限り一致させ、急冷を避けることで目立つ貫入を抑制しています。結果として、透明感に富む滑らかな釉肌が実現され、酒の色味を歪みなく映し出します。
口縁を薄掛けにし、焼成中に素地の鉄分を酸化させて銀鼠色を出す伝統的な「鉄縁」の技法を施しています。使い込むほどに黒艶を帯び、青と対比して器相を引き締めます。
温度保持:壁厚を均一にすることで、冷酒はひんやり、燗酒はじんわりと適温を保ちやすい構造です。
口径の広さ:香りを逃がしすぎないやや絞り気味の椀形は、吟醸香や熟成香を穏やかに立ち上らせます。
注ぎ易さ:注ぎ口のエッジを鋭角に削りつつ釉を残すことで、滴切れが良く、テーブルを汚しません。
青瓷は六朝期の越州窯に始まり、北宋期の汝窯や南宋期の龍泉窯で頂点を迎えました。日本へは鎌倉期以降に禅僧がもたらし、茶器のみならず酒器としても愛玩されてきました。特に青瓷の澄明な色は、米の旨味を残した日本酒の淡い黄金色を美しく引き立てるため、桃山期の茶人たちも酒席で好んで用いたと伝えられています。本作はその伝統を踏まえつつ、現代の食卓やバーシーンにも映えるミニマルなフォルムに再構成されています。
映り込みの景
釉面が鏡のように周囲を映し込み、注いだ酒もまた柔らかな光を返します。
鉄縁の経年変化
口縁の銀鼠は使用とともに黒艶を帯び、青とのコントラストが深まります。
手馴染み
椀形の胴は掌に自然に収まり、片口の出っ張りが指掛かりとなって安定して注げます。
多賀井正夫様の「青瓷酒器」は、澄明な青と端正な鉄縁、そして機能性を備えたミニマルフォルムが融合した一品です。一献を傾けるひとときを静かに格上げするとともに、年月とともに育つ釉肌の景色が、酒席の記憶をそっと重ねてくれるでしょう。どうぞ末永くご愛用いただき、季節の酒と共に青瓷の移ろいをお楽しみくださいませ。
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