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幅 : 11.4cm 高さ : 7.7cm
天目釉筒茶盌(てんもくゆう つつちゃわん) 岡田優様作
――「夜の星屑を湛え、山風をひそやかに抱く筒景」
本作を覆う天目釉は、深い瑠璃黒の底に銀砂のような微細結晶を散りばめ、静寂な夜空をそのまま器壁へ封じ込めたかのようです。淡い光を受けるたびに、きらりと瞬く星屑が揺らぎ、視線が器の奥へと誘われます。口縁には還元炎の名残として柔らかな赤紫が現れ、闇にほのかな温度を差し込みます。
筒形の胴部には二本の輪状の段が巡り、陰影の帯を形づくっています。この控えめな起伏が、手取りの際に指を自然と受け止め、安定した持ち心地をもたらします。同時に、光が段差に沿って走ることで、漆黒の釉面にリズミカルなグラデーションが生まれ、静かな造形に動の表情を添えています。
施釉後、薪窯での高温還元焼成によって鉄分が析出し、見る角度によっては薄氷のような銀色の光が浮上します。濃茶を点てれば泡の間に星光が宿り、薄茶であれば淡い緑が夜空のグラデーションのように溶け合い、茶の湯の一碗に詩情を添えます。
筒茶盌ならではの直立した壁は、茶筅を深く沈めても泡が周囲へ飛び散りにくく、点前動作を安定させます。やや低めの高台は重心を落ち着かせ、指先で軽快に回しやすい設計です。口造りがわずかに外反しているため口当たりが滑らかで、飲み手の唇をやさしく受け止めます。
宋代・建盞由来の天目釉という古格に、岡田優様は清水五条坂で培った柔和な造形感覚と、宇治・炭山の自然がもたらす躍動を融合させています。二重胴という構成が夜空に走る雲の層を思わせ、微細結晶の煌めきは山風が巻き上げた星塵のよう。伝統を踏まえながらも独自の詩情を響かせる本作は、茶盌としての実用を超え、見る者の想像を限りなく拡張します。
夜の深みと星屑の輝きを同時に抱く天目釉筒茶盌――掌の中で陰影が移ろうたび、静寂の山景と風の気配を思い起こさせ、茶席に幽玄の物語を運んでくれることでしょう。
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